エコバッグとレジ袋のLCA比較

2020年7月から、日本でもレジ袋の有料化がはじまりました。環境省の調査によると、同年11月の時点で71.9%がレジ袋の受け取りを辞退、94%がエコバッグを持っていると回答しており、多くの人がレジ袋からエコバッグへ移行していることがわかります。
レジ袋よりエコバッグを使う方が環境にいい。ついそんな先入観を持ってしまいますが、プラスチックを排出しないことだけが環境にいいことなのでしょうか。デンマークでは、本当に環境負荷の少ない買い物袋を探る調査が行われました。


デンマークの環境食品省環境保護機関は、「買い物袋のライフサイクルアセスメント」という2018年のレポートのなかで、レジ袋、紙袋、布袋など異なる素材でできた買い物袋における環境負荷の比較評価を発表しました。
比較のために使われている「ライフサイクルアセスメント(LCA)」は、製品の資源調達から製造、流通、廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合して評価する手法です。そして、1枚の袋を作る上で発生する環境負荷を試算し、それぞれの買い物袋に推奨される最大の再利用回数を明らかにしています。

その結果、1枚あたりの環境負荷がもっとも少ないのはレジ袋(LDPE素材)でした。推奨される再利用回数は1回。これは、コンビニやスーパーでもらったレジ袋を、買い物袋やゴミ袋として1回再利用することで、新たに1枚レジ袋を消費した場合に生まれる環境負荷がカバーできるということです。
このレジ袋を基準としたとき、エコバッグとしてよく見かけるポリエステルバッグは35回、紙袋は43回再利用して、ようやく1回あたりの環境負荷をレジ袋よりも抑えられます。
オーガニックコットンバッグはもっとも環境負荷が大きく、特に評価項目のうちオゾン層の破壊という観点で見ると20000回再利用する必要があるという結果になりました。天然コットンの育成や加工に手がかかり、生産過程における環境コストが非常に高くなってしまうことが、環境負荷の主な要因となっているようです。そして、20000回使用する前に壊れてしまい、また買い直すことになれば、1回再利用するレジ袋の方が環境にいいということになります。

この調査はデンマークの環境条件に基づいて行われているため、日本でも全く同じことがいえるわけではありません。しかし、このような知識があれば、使い捨てプラスチックだから環境に悪い、天然素材だから環境にいいという言説的なイメージにとらわれることなく、本当に必要な買い物袋を選び取ることができるのではないでしょうか。