PROCESS 04. 設計

食品容器の
廃棄体験を設計する

これまで生産しやすさや使いやすさが追求されてきたのと同じように、これからのパッケージ・プロダクトは、廃棄時のユーザー体験まで考えてデザインする必要があるのではないでしょうか。前項までに考えたこと、学んだことも踏まえながら、捨てる瞬間のストレスやゴミ箱に収まる姿にフォーカスをあて、検証を重ねた制作プロセスを振り返ります。

CONTENTS
  1. 捨てる瞬間まで気持ちいいかたちとは
  2. イメージを立体化していく
  3. 折りたたみ方を検証する
  4. フタをおさめる2本の罫線
  5. 実用に向けて印刷所へ

捨てる瞬間まで気持ちいいかたちとは

お弁当容器を捨てることに、後ろめたさを感じている。そんな日頃の実感から、今回の制作ははじまりました。
プラスチック製の弁当容器を捨てるとゴミ箱の中でかさばり、無駄なすきまを残したまますぐに一杯になってしまうもったいなさ。あるいは、分別が必要だとわかっていながら、箸や容器を一緒にまとめて捨ててしまう罪悪感。もちろん手間をかけて、圧縮したり分別したりすることはできますが、面倒という気持ちの方がいつも勝ってしまいます。

ゴミを捨てるという日常の行為だからこそ、適切な廃棄を強要するのではなく、自然とうながすような容器であってほしい。そこで、使いやすさだけでなく捨てやすさまで考えた、お弁当容器の開発に取りかかりました。デザイン設計の時点で、廃棄時の体験を織り込む。それは当たり前のことのようで、あまり照らされてこなかった足もとを見つめ直すような試みでした。

イメージを立体化していく

まず、スケッチでベースとなる形を起こし、CGグラフィックでおおまかな設計を考えていきました。最初のイメージは、商品棚からゴミ箱までスリムに収まるスタッキング可能な容器。ちょうど二段弁当の下の段だけを取り出したような、内嵌合のフタをもつシンプルな容器です。

全体的な形のイメージができたら、3Dプリンターで出力し、手に馴染むサイズ感を決めていきます。今回東京工芸大学の東吉彦教授にご協力いただき、紙素材の立体物を出力できる3Dプリンター「Mcor IRIS 3D color printer」を使用しました。3Dプリンターは樹脂を出力するものが一般的ですが、Mcor IRISはコピー用紙を材料とし、環境負荷の少ない水性接着剤で貼りあわせた紙の積層から立体を切り出していきます。

素材の比較評価(PROCESS 03参照)を行っていたのもこの頃で、素材がもつ環境への影響を優先して紙を想定した検証が本格化しました。はじめ、側面のアールを紙で成形するために紙コップやヨーグルトカップの技術を応用しましたが、紙を巻いた継ぎ目や周縁部の絞り加工がシンプルな造形の中で際立ってしまうなど、意匠の再現性に難航。

パルプモールドによる再現は可能でしたが、プロトタイプの時点で金型を製造するのは現実的ではないため、ベースの印象は残しつつスタッキングとは別のアプローチも並行して模索し始めました。

折りたたみ方を検証する

立体化した容器のプロトタイプを手に取りながら議論していくなかで、よりコンパクトに捨てる方法として「折りたたむ」という機能の検証に移っていきました。
プラスチックやパルプモールドにはない紙の柔らかさを生かし、さまざまな蛇腹のパターンや、カトラリーを使って押しつぶせる容器など、折り方のアイデアを試案。そして、折りたたみやすいことと容器としての強度を共存させるフェーズに入るにあたり、より専門性の高い知識とコンスタントなモック検証が必要となりました。

そこで、複雑な構造の容器包装を得意としている協進印刷の千田健一氏にご協力を依頼。実現可能な折り方をご教授いただきながら、コンパクトになる、たたんだ後に広がらずまとまるという観点で再考していき、折りたたんだ後にフタに収納する現在の形に変化していきます。

折りのついた紙容器はこれまでにもありましたが、その多くは切れ込みを入れた紙を組み立てたものです。今回の容器は切れ込みがなく、一枚の紙を折り紙のように折りあげているため、食品から油分や水分が出てきても外に漏れ出ない構造になっています。

フタをおさめる2本の罫線

このお弁当容器には、折りたたみのガイドラインとなる罫線とは別に、フタの裏側に2本の罫線を入れています。それは、「フタが浮き上がってくる」という問題点を解消するカットラインです。

容器はそれぞれ、台形型の身箱と身箱を収納する正方形のフタに分かれています。しかし、いざ蓋を容器にはめると、台形の身箱の内寸に正方形の蓋がぴったり沿わず、抵抗によって下から押し出され、どうしてもフタが浮いた状態になってしまいました。

その課題に対して、フタの裏に2本の罫線を入れることで、底面のみをたわませるというアイデアを千田さんからいただきました。大きく構造を変えることなく、しなやかな紙の特性を生かす。深い知見によって引かれたラインは、密閉機能を格段に向上させ、容器の輪郭を生み出すひとつのアイデンティティにもなっています。

実用に向けて印刷所へ

最後に、フタのポケットなど細やかな意匠について検証。印刷所でモックを精査しながら微調整を行いました。写真では紙の取り都合を確認するためにカッティングした原紙を手に取っていますが、実際の製造施設では組み立てられた状態の身箱が機械から出てくるため、手作業を発生させることなくそのままスタックして納品できます。